臨床検査のピットフォール
体腔液細胞診塗抹標本・セルブロック作製におけるピットフォール
濱川 真治
1
1公立昭和病院臨床検査科
pp.426-429
発行日 2016年5月1日
Published Date 2016/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206436
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体腔液細胞診の目的と標本作製の重要性
体腔液細胞診の主たる目的は,炎症所見の把握や癌性漿膜症の原因となる悪性細胞の検出であり,他の検査に先立って癌の存在をいち早く発見することができる検査法の一つである.また,細胞形態学的特徴や免疫組織化学染色などの補助的検査を追加することにより,組織型や原発巣推定,個別化医療などの治療法の選択にも貢献する.
体腔液細胞診の材料として胸水や腹水,心囊液が用いられるが,一般的に遠心分離法による細胞沈渣を回収し,赤血球上層部(いわゆるバフィーコート部 図1黄色矢印↔)の有核細胞層からサンプリングを行い,引きガラス法などによる塗抹標本を作製する.悪性細胞は分化度や組織型により,集塊は球状,乳頭状,ミラーボール状,中空状など,孤立性出現細胞は細胞質の空胞化,大小不同性を認めるなど,さまざまな形態変化として現れる.一般的に,孤在性の大型細胞や大型細胞集塊は塗抹の引き終わりに集簇し,出現する傾向がある.また,目的とする細胞がごく少数の場合は良悪の判断が困難となり,さらに,目的の細胞が出現していない場合はサンプリングエラーの可能性も否定できず,診断可能な変性の少ない細胞をいかに多く標本に載せるかなど,標本作製の精度向上に努めなければならない.
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