オピニオン
日本臨床神経生理学会認定技術師制度の現状と今後
園生 雅弘
1
1帝京大学医学部神経内科
pp.628-629
発行日 2015年7月1日
Published Date 2015/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205976
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脳波・筋電図などの臨床神経生理検査は,その施行のための技術水準が非常に高い検査である.脳波については,通常の脳波を取ること自体はそれほど高い技術ではないと一見思われるかもしれないが,どのような波形を狙い,そのためにどのような記録に重点を置くか,出現した怪しい波形を確認するためにどこまでしつこく記録するかなどを決めるために,脳波波形をその場で判読して判断することがかなりの程度要求される.また,きれいな脳波波形を記録するためのアーチファクト対策も簡単ではないが,それが特に重大となるのは,ICUでの記録,とりわけ脳死判定である.ここでは,ICUなど雑音の多い環境で,5倍拡大ゲインでのアーチファクトが器械の内部雑音以下を実現するという過酷な要求がなされる.
筋電図検査では,技師が施行するのは神経伝導検査,反復神経刺激試験などだが,これらがいずれも高度な技術を要することは言うまでもない.単に刺激して何らかの波形を出すだけなら非熟練者でもできるかもしれないが,さまざまなピットフォールに熟知し,それに対処して正しい波形を得ることができるためには,深い知識と確かな技術が要求される.重大なのは,未熟な技能で間違った波形を得てしまうと,それが直ちに誤診につながる点である.例えば,誤って伝導ブロックがあるという結果が出ると,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)と診断されて,免疫グロブリン静注療法が行われてしまいかねない.
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