感染症の検査法 Ⅱ 感染症各論
[7]性行為感染症(STD)
田中 正利
1
,
熊澤 淨一
1
1九州大学医学部泌尿器科
pp.642-646
発行日 1989年5月15日
Published Date 1989/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205000
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STDの概要
従来,「性病」とは性病予防法に定められている梅毒,淋疾,軟性下疳,性病性リンパ肉芽腫の4疾患を意味していた.しかし最近は,性行為によって伝播・感染するものを一括してSTD(sexually transmitted diseases;性行為感染症)と呼ぶことが多くなってきた.すなわち,社会環境,性風俗の変遷に伴い,STDの範疇に入る疾患は増加しており,必然的に治療も複雑化してきている.
現在STDと考えられている疾患およびその原因微生物をまとめると,表1のごとくである.各科領域にわたる疾患であり,原因微生物も,細菌はもちろんのことウイルス,寄生虫など多種類が含まれている.しかし,依然としてもっとも頻度が高いのは淋疾を含む尿道炎である.尿道炎においては,以前はNeisseriagonorrhoeae(淋菌)により生ずる淋菌性尿道炎(Gonococcal urethritis;GU)が多かったが,1960年代後半から1970年代前半にかけて,欧米ではN. gonorrhoeae以外の原因微生物による非淋菌性尿道炎(Non-gonococcal urethritis;NGU)がGUを上回るようになった1,2).わが国でも,近年NGUの増加は著しく,現在ではGUよりも頻度の高い疾患となっている.NGUの原因微生物としては,現在のところ表1に示したものが考えられているが,病原性が確立し,もっとも解明が進んでいるのはChlamydia trachomatisである.
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