増刊号特集 泌尿器科外来診療—私はこうしている
Ⅵ.診断・治療のための必須知識
STD(性感染症)
小島 弘敬
1
Hiroyuki Kojima
1
1日本赤十字社医療センター感染症科
pp.253-261
発行日 2000年3月30日
Published Date 2000/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902935
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1 STDの特性
1999年施行の感染症新法による届出制のSTDは梅毒,エイズ,B型肝炎(HBV)で,動向調査対象は淋病,クラミジア(CT),ヘルペス(HSV),ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)による尖圭コンジロームである。STDは長短さまざまの潜伏期ののちに,淋菌性尿道炎(GU),淋菌性およびクラミジア性の結膜炎を例外として,多くの,症状の自覚されない感染を生じる(表1)。男子のGU症例の約半数が,無症状の女子の淋菌性咽頭炎を感染源とすることはその1例である。STDの中で梅毒の抑制が比較的よい理由は,抗体検出が徹底して行われたためである。淋菌には,抗体検出法が末開発である。
淋病,CT,梅毒は治癒後にも容易に再感染する。パートナーが治療されないといわゆるピンポン感染が生じる。STDには母子感染,無症状の長期間後の癌を含む続発症がある。起因菌の正確な検出に基づくパートナーと感染源との治療の徹底により,淋病とCTとを激減させたスウェーデンでは,卵管性不妊の原因であるPID症例が激減している1)。女子に比して有症症例の比率が高い男子STDの受診機会が多い泌尿器科医のSTD抑制に占めるべき役割は大きい。
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