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もう一つのIL-2レセプター
内山 卓
1
1京大第1内科
pp.413
発行日 1989年4月1日
Published Date 1989/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204936
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1976年にT細胞増殖因子として発見されたインターロイキン2(IL-2)は,1981年,標識IL-2を用いた結合試験により,他のペプチドホルモンと同様に,活性化T細胞表面上に存在する特異的結合部位(レセプター)に結合することにより,その作用を発揮することが明らかにされた.同じころ,活性化T細胞に対する抗体として作製された抗Tac抗体が,その後の研究により,IL-2レセプターを認識することが判明し,この抗体を用いてヒトIL-2レセプターの構造と機能の研究が進んだ.その結果,IL-2レセプターは,251個のアミノ酸から成る蛋白骨格に多数の糖鎖がついた,分子量約55000の糖蛋白で,IL-2の結合する細胞質外の部分,19個のアミノ酸から成り疎水性で細胞膜を貫く部分,および13個のアミノ酸から成る細胞質内の部分,の三つの部分で構成されていることが明らかになった.
このように,IL-2レセプター(Tac)のcDNAがクローニングされ,そのアミノ酸配列が解明されたが,いくつかの重要な問題点が残った.すなわち,Tac cDNAの発現実験では,線維芽細胞においては,低親和性IL-2レセプターのみしか発現せず,高親和性を決定する因子が不明であること,IL-2レセプターの細胞質内の部分は短く,そのシグナル伝達機構が不明であること,さらに抗Tac抗体とは反応しないにもかかわらず,IL-2に反応する細胞が存在すること.これらの事実から,抗Tac抗体で認識されるIL-2レセプター以外に,IL-2結合蛋白あるいは,IL-2レセプター関連蛋白の存在を予想する研究者は少なくなかった.
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