Letter from Abroad 海外で活躍する日本の検査技師
同僚たちを取り巻く社会—スイスからの手紙(5) スイス5
Midori Storchenegger
1
1ルツェルン県立病院細胞診部
pp.1136-1137
発行日 1987年9月1日
Published Date 1987/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204271
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■環境汚染の憂うつ
ヨーロッパの1986年から1987年にかけては,記録的な厳冬でした.ルツェルンでは来る日も来る日も雪雲や厚い霧が垂れこめ,太陽の見えた日は非常に少なかったということです.ただこれだけのことなら天候の話で終わるのですが,この冬に,ルツェルンでは気管支障害を訴えた人の数が非常に多かったというのです.車からの排ガス,セントラルヒーティングからの排気,さらに,工場やごみ焼却場からの排気が厚い雲の壁に阻まれてうっ積したのが,この気管支炎患者増多の原因だろうといいます.しかし,たとえこの冬の天候がよかったとしても,これは,排ガスが上昇したために人体にあまり害が及ばなかったというだけで,より広い環境汚染の観点から見ると,なんの解決にもなっていないわけです.ヨーロッパでは大気汚染が原因で,森林が死につつあるというのですから,憂うつなことです.
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