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スイスだより
村橋 豊穗
pp.20
発行日 1952年11月15日
Published Date 1952/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201126
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一月に東京を發つてから,スカンヂナビヤに6ヵ月餘を過し只今,スイスに來ています。明日(7日)からパリへ入ろうと云う所。御承知のようにスカンジナビヤでは世界の何處にも魁けて,結核死亡率が著しく減りました。實に驚く程の減少振りです。私のThemaが「結核豫防の研究」というものである爲に,或人々に云わせると「そんなに減つて了つた所へ行つて何になるか」と云うようですが,こう云う立派な足跡を辿ることは最も必要なことなのではないでしようか。結核撲滅と矢鱈に聲を張上げても無駄とは云わぬ迄も效果が甚しくうすい,若し夫に實行が伴わなければ,又實行するにしても個人々々の個々の動き―我勝ちの,勝手な動き―ではどうにも始末がつかなくなるでしよう。どうしても斯うした問題については,國家國民の一糸亂れぬ協同動作―チームワークのとれた―が必要になつて來ると思います。BCGの接種も勿論必要,隔離治療は尚更必要,そして又榮養,住居,收入,疾病保險など皆必要となるものなのですから,そうした個々のものをうまく均衡を保ち乍ら,やるのでないと何時迄も不徹底な空轉に終るのではないでしようか。日本の結核死亡率が減つたといつてもまだまだ不安定でありデンマークの樣な所に達するには日を要することでしよう。
所で牛結咳の問題は今,日本でどうなつているでよしうか。
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