臨床生理検査と技術 わだい
呼吸機能判定における正常値
藤本 順子
1
1徳島大学医学部附属病院検査部
pp.666
発行日 1987年4月15日
Published Date 1987/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204138
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近年,大気汚染,喫煙や人口の高齢化などの原因で肺気腫,慢性気管支炎,気管支喘息などの末梢気道に病変を伴う閉塞性肺疾患や,肺線維症,腫瘍などの拘束性肺疾患などの呼吸機能障害が急増し,それに伴って呼吸機能検査の需要が著しく高まっている.呼吸機能検査は呼吸機能障害の発見,障害の程度および治療のみならず,多くの疾患の補助診断,治療経過,術前検査および予備能力などの判定や,大気汚染・公害病に対する診断と予防などにも欠くことのできない検査法の一つとなり,臨床上重要な位置を占めている.
呼吸機能検査は肺活量,1秒量,1秒率,最大換気量から成る一般肺機能のほか,最近ではフローボリューム曲線,クロージングボリューム検査,残気量および拡散,その他の複雑な検査法もルーチン検査として行われるようになった.呼吸機能検査測定値の評価には標準値を用いて判定する必要があるが,わが国では総合的に確立された標準値は少なく,検査項目によっては諸外国の報告を基準に標準値を定めている検査機関が多いのが現状である.しかし,人種,体格,生活環境および検査に用いる諸条件の相違などから,これらの値を直ちに日本人の呼吸機能検査成績の標準値に用いるには問題があり,日本人を対象とした呼吸機能検査の標準値を設定する必要性がある.
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