- 有料閲覧
- 文献概要
救急で患者さんが搬送されて来られたとき,もし患者さんの重要なデータをほかの医療機関,研修会などから偶然知っていて,立場的には守秘義務が発生していたとしたならば,あなたは義務を破って伝えますか? 伝えて患者さんが助かったとしたならば,きっと家族を含め咎められるより感謝されることでしょう.しかし,情報の漏洩については第三者からは問われる可能性が大きい.
医療で最初に大事なことは,患者さんが今どんな状態かを的確に把握することでしょう.急に悪くなったのか,以前から悪いのかなど,素早く判断できれば治療に大変有用となります.検査値の見方において,基礎体温のように健康時・定期検査などの個人の基礎データを基に診断できればその人の状態を的確に把握することができるでしょう.ALT値30IU/lはきっと基準値内の検査値でしょう.しかし,過去の基礎データが10IU/l前後で推移していたとしたならば,なんらかの疾患の可能性がうかがえます.基礎データ判定のためには,より多くの個人データの蓄積と共有化が必要です.各方面で施設間是正・共有化について検討実施されていますが,その進展は非常に遅く感じられます.これは単に,医療業界のみに問題があるのではなく,日本社会全体のシステム構造に問題があるように思えてなりません.情報社会といわれている現在,検査値の共有化はまさに情報そのものです.検査値は生命にかかわる重要な情報です.しかし,各医療機関同士さらには系列関連病院間ですら連帯はほとんどとれていないのが現状でしょう.これをどのように統合し管理していくのか課題は山積しています.このなかで,今後特にプライバシーを含めた情報管理が大きな問題となるでしょう.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.