検査を築いた人びと
細胞分裂を初めて顕微鏡的に明らかにした ウォルター・フレミング
酒井 シヅ
1
1順天堂大学医史学
pp.318
発行日 1987年4月1日
Published Date 1987/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204035
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細胞分裂の実態に科学の目が届いたのは,1870年代に入ってからであった.その立役者の一人がウォルター・フレミング(1843〜1905)である.彼は,この時代に先立って起こった顕微鏡の革命,つまり相次ぐレンズおよび照明法の改良と油浸レンズの発明を十分に活用し,固定法・染色法の改革を手がけて核分裂を初めて正確に記した.そればかりか,彼は両棲類の生きた細胞を顕微鏡下にとらえ,細胞分裂を継時的に明らかにするなど,細胞の核という微小世界の窓を開いた人でもあった.
フレミングは,現在は東ドイツに位置するメクレンブルグに生まれた.少年時代は医学よりも文学,言語学に強く惹かれていたが,父親がこの地方の精神病院長であったためであろうか,大学は医学部に入学した.このころドイツでは,学期ごとに大学を替えることができたので,彼はゲッチンゲン,チュービンゲン,ベルリン,ロストックと各地の大学に学びながら,卒業論文の準備をしていったが,どうもこのころから,医学そのものより生物学に惹かれていったようである.1868年,日本では明治維新の年に彼が提出した卒業論文は「動物の毛様体筋」についてであった.
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