エトランゼ
覚えても使わない方がよい英語"I am sorry to be late."
常田 正
pp.1031
発行日 1986年8月1日
Published Date 1986/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203831
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遅れたらあやまるのが当然です.ですから日本の人はよその国の人に対してもすぐ,「おそくなりましてドーモスミマセン」と頭をかきかき謝ります.でもそんなことがよその国の人に通じるか疑問です.約束の時間に遅れて来て申しわけないくらいだったら,遅れなきゃいいんだと思うのではないでしょうか.誇り高き民族はそうやたらに謝りません.謝りたくないから無理してでも時間を守るのです.
じゃあ,遅れてしまったらどう言えばいいんだ──と腹の中で不満な人にそっと教えておきましょう.謝るかわりに怒るんです.「ホテルのボーイに朝5時に起こせと言っておいたのに忘れやがった」とか,「タクシーの運転手が外国人と見てわざと遠回りしおった」,「自動車のタイヤがパンクした.道路のせいだ」,「この交通渋滞は何とかならんのかね」などと,相手が恐縮するような科白(せりふ)を早口で語気鋭くまくしたてるのです.(そうするとついでに英語も上手になりますよ.)明治の頃に時間に遅れたのを懷中時計のせいにして,「貴国の時計は何たる不良品だ」と一喝して時計を床に叩きつけて相手を恐れ入らせた日本の外交官がいたそうです.今では時計は大抵日本製ですからこの手は使えないとしても,その心は範とすべきでしょう.
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