エトランゼ
覚えても使うことのない英語"Someone in."
常田 正
pp.703
発行日 1986年5月1日
Published Date 1986/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203738
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東京オリンピックの頃を境に日本経済は上向きになり,日本の商社員や技術者が外国にどんどん出て行くようになった頃,英語学習熱もひとしきり盛んになりました.丁度その頃「英語に強くなる本」という本がベストセラーになったりしました.トイレに入っている時にトントンと扉を叩かれたら,「はいってます.」という答を英語では何と言うか……というかなり形而上学的な問題をこの本はとりあげていました.
"I am in."とか"I am here."なんて答えたら恥ずかしいことに"I"であることがばれてしまいます.正解は"Someone in."であるとこの本は教えています.ところが実際の所,あちらの公衆所の扉は上と下が大きく開いているのが普通です.ひどい所では顔がまる見えだったり,扉が全然なかったりします.外から見て中に人が入っていることは一目瞭然です.また家庭ではトイレの扉は使っていない時は開け放しておくのが習慣です.扉が閉っているのは誰かが入っているしるしです.したがって,閉っている扉をわざわざノックする人はいません.人が入っているのを承知で扉を叩くような無礼者がいたら口で答えるよりも,逆に内から扉を蹴返してやるのがよいのではないでしょうか.
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