技術講座 血液
血液凝固検査8—凝固インヒビターの測定(2)—アンチトロンビンIII
松田 保
1
1金沢大学第三内科
pp.995-999
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203491
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血液には,組織が破壊されて細胞から遊離した組織トロンボプラスチンに触れたり,またガラスやプラスチックの試験管壁など正常な血管の内膜とは異なった表面に触れたりすると,凝固してフィブリンを生ずる性質がある.この性質は,出血を防ぐという点で極めて重要である.
血液が凝固するためには凝固因子と呼ばれる,血液中に存在する特殊な蛋白の存在が必要である.しかし,大した出血でもないのに大きなフィブリンができたり,全く出血を生じていないが,動脈硬化のような原因で血管の内膜が多少異常になっているだけなのにフィブリンができたりすると,血液の循環が妨げられる.フィブリンの大きさによっては血管が完全に閉塞してしまうこともある.この状態は血栓症と呼ばれるが,血液には,正常の状態で血栓症が起こるのを妨げるような作用をもつ物質も含まれている.これは血液の凝固を防ぐという点で,凝固のインヒビター(阻害物質)と呼ばれるが,血液中の凝固因子の量が低下すると出血が起こるように,ある種の凝固インヒビターは,その量が正常の50%以下に低下しただけで血栓を生ずることがある.
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