私たちの本棚
一服の清涼感—かあちゃん太閤記—前田 おま子 著
鈴木 末子
1
1宮城県総合衛生学院
pp.838
発行日 1985年9月1日
Published Date 1985/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203448
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橋田壽賀子のシナリオで朝のNHK連続ドラマ"おしん"は,日本中を沸かした.山形県では大根めし,おしんせんべい,おしん漬と数えあげたら,きりがないほどである."おしん"の視聴率は最高だったといわれているし,日本ばかりでなく韓国版"おしん"もできたそうである.ここで"おしん"の話を持ち出したのは『かあちゃん太閤記』を読んで著者,前田おま子とおしんに共通した点があると考えたからである.おしんに比べたら,おま子は小学校も卒業しているし,大根めしを食うほどの貧乏でもなかったが,二人とも小さいときから苦労して大成した人たちだからである.
おま子は小学校を卒業すると富士紡績で紡績女工として5年間働き,生家の近くに別荘ができると女中奉公に上った.23歳で結婚,子供が生まれ幸せな結婚生活を過ごしたが,応召された夫が終戦になって帰ってきてから,日雇いに生き甲斐を失って酒びたりの毎日を送るようになる.そんな夫を見限り,子供を捨てようとまで思いつめて家を飛び出したものの,結局捨てられなかった.
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