基礎実習講座
血液寒天培地の作り方
横山 八助
1
1国家公務員共済組合立川病院検査科
pp.469-472
発行日 1985年5月1日
Published Date 1985/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203351
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よく,細菌検査を志している学生さんから,「血液を寒天培地の中に入れるのは,栄養分としてではないのですか?」と聞かれる.そのつど「血液を培地に加えるのは,栄養または発育促進効果からよりも,むしろ培地中の菌に対する発育阻止物質の吸着の方が大きいからですよ」と説明している.であるから,なにも血液を用いなくとも,血液寒天培地と同等の発育支持力をもつ培地を作ることは可能である.例えば,果物エキス,心筋浸出液,脳浸出液,血清などがそれである.にもかかわらず,血液を寒天培地に加えるのは,その溶血性が類似菌どの鑑別点,あるいは病原菌株分離のための指標となることにほかならない(例:Haemo-Philas inflzaenzaeとH. haemolyticusの溶血性).
では,ただ単に寒天培地に血液を加えさえすればよいかというと,そんな簡単なものではなく,基礎培地の性状や組成によって,菌の溶血性の状況が異なり,また,ある菌に対しては発育の支持力も変わってくる.一方,添加する血液の動物種によっても,基礎培地のときと同じことがいいうる.また時には,その血液を加えることによって,培地にある菌に対する発育阻止作用が逆に現われる場合がある.
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