〈検査室メモ〉
複糖寒天培地の理論
高橋 昭三
1
1東大細菌
pp.481
発行日 1957年11月15日
Published Date 1957/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905406
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クリクラー培地,ラツセル培地には,乳糖1%,ブドウ糖0.1%の二つの糖が入つています。これを半斜面,即ち高層部と斜面部のあるようにかため,斜面部に菌を接種すると共に,高層部に穿刺培養を行います。
この場合,斜面部の菌は,空気が充分供給されますから,盛に発育しますし,物質代謝も盛んです。したがつて,ペプトン,プロテオーゼ等の,アミノ酸化合物が盛に分解され,その結果,pHは上昇し,培地表面はアルカリ性にかたむきます。しかも,アンモニアのように,小さい分子のものでなく,緩衝液の働きをするプロテオーゼ,ペプトンの存在の下で,アルカリ性になると,pHの変化はごく表面丈に止ります。このような状態の場所を,酸性にするためには,糖を分解して産生する酸がかなり必要であり,1%程度の糖が含まれた培地でないと,充分な酸は生じない事になります。したがつて,1%に含まれる乳糖を分解しない限り,斜面部は酸性になりません。
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