技術講座 細胞診
酵素抗体法の細胞診への応用
長村 義之
1
,
渡辺 慶一
1
1東海大学病理学
pp.162-168
発行日 1985年2月1日
Published Date 1985/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203268
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酵素抗体法の細胞診への応用
近年,免疫組織化学は主としてパラフィン切片を中心として日常の病理診断に盛んに応用されてきており,現在,組織病理診断学において不可欠の手段となってきている.特に,腫瘍の良性悪性の鑑別,上皮性あるいは非上皮性の腫瘍の鑑別,腫瘍の組織形の確定,悪性リンパ腫,形質細胞腫の確定診断などに,その威力を発揮しているといえる.最近注目されているいわゆる中間フィラメント(intermediate filament)にはケラチン,ビメンチン,デスミン,ニューロフィラメント,グリア原線維酸性蛋白(glial fibrillary acidic protein;GFAP)などが含まれ,それぞれ組織型に特異性を持ち,腫瘍の組織型の確定に特に有用であるとされている(例えば,ケラチンは上皮性腫瘍の,デスミンは筋原性腫瘍の,GFAPはグリオーマのそれぞれ診断根拠となる).
一方,細胞診領域においても,先に述べた組織診断における同様の診断上の問題点があり,免疫組織化学的な手法により解決することを要求されることが多い.我々はこれまでの細胞診における酵素抗体法の応用において,体腔液中の癌細胞と中皮細胞の鑑別に癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen;CEA)の染色が極めて有効であることを経験している(例えば,癌細胞はCEA陽性であるが,中皮細胞はCEA陰性でケラチン陽性である).また,後述するように,乳腺細胞診,婦人科細胞診,針生検細胞診などにも酵素抗体法が応用されている.
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