技術講座 生化学
尿中酵素の測定3—LDH,LDHアイソザイム
杉田 収
1
1新潟大学検査部
pp.983-987
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203182
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尿を検査材料にした場合では,血液の採取に比較して検体の採取が容易なために,乳児から重症患者まで,ほとんど苦痛を伴わずに頻繁に採尿し,繰り返し検査が可能である.尿LDH活性の定量では尿量の因子が加わること,尿LDHは低活性の場合が多いために尿を濃縮しなければならないこと,さらに高濃度の妨害物質など不利な面もあるが,泌尿器系疾患では血清LDHより豊かな情報が得られる場合も多い.
尿LDHの供給源は,血清,腎,尿管,膀胱,血球および前立腺分泌物などである.これらの供給源からは,一定量のLDHが常に供給されているはずである.腎からは血清中のLDHがわずかながら漏出していることが考えられ,また腎をはじめそれぞれの泌尿器系組織を構成する細胞には,古い細胞は壊れ,新しい細胞が形成される代謝があるからである.腎はLDHをはじめ多くの酵素を含んでいるために,その腎組織の癌化や病変は,血清LDHとともに尿LDHにもなんらかの変化を引き起こすことが考えられる.さらに尿管や膀胱の病変は,もっと直接的に尿LDHに影響を与えるものと想像される.尿LDHと腎癌や膀胱癌との関係についてはすでに報告1〜3)があり,尿LDHは上昇するとされている.
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