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医療の中で中央検査室の占める役割は大きい.検査データをもとにして診断ついで,治療,予後の追求,治癒の判定などを行うことが正しい医療であるということが,人々の間に常識となって定着している.例えば実際に胃の内視鏡検査,ついで生検,癌の診断の確定,ついで手術といった一連の過程は外科手術のできる病院なら何処でも行われている.胃の早期癌など僻地の小さな病院でこのような過程で処理されて,立派な診療が行われている.医療を医師,看護婦,薬剤師などで行ってきた時代はすぎ去り,医療に携わる人々の幅がずっと広がった.直接の医療に関与するだけでも検査技師,レントゲン技師の参加だけでは医療は成り立たなくなってきている.
例えば検査値の時間的経過を追うことも必要である.病歴に検査値データがたくさん貼りつけてあり,それを眺めて,データの変動から病気の推移を判断する.素データとして病歴にデータが保存されていることは必要であろう.しかしこれらデータをコンピューターにデータベースとして記憶させ,検索プログラムを用意しておけば,コンピューターは経時的変化を表あるいはグラフにして瞬時に我々に提供してくれる.素データを眺めながら頭の中に表やグラフを描くような,まのあたりに表やグラフを眺めたほうがより正確な判断ができる.病理の組織診断でも頻度の少ない疾患では診断の困難のことが多い.また良性・悪性の境界病変などはいつも悩みの種である.このような症例でも,10年,20年といった長い期間の標本が保存されていればその中に含まれていることが期待できる.しかもそれら症例がデータベースとしてコンピューターに記憶されていれば,その症例を容易に探し出し,標本のコレクションから標本をとり出し,現在直面する診断困難の症例と対比することができる.このような業務にたずさわる人も医療には必要になる.
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