最近の検査技術
IgM抗体検出法—特にトキソプラズマ症,風疹に関して
亀井 喜世子
1
1帝京大学医学部寄生虫学
pp.377-382
発行日 1982年4月1日
Published Date 1982/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202486
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感染あるいは免疫の過程で初めに現われる抗体はIgM抗体である.IgM抗体の産生は一過性であり,ついでIgG抗体が流血中に現われる(図1).IgG抗体はIgM抗体に比べ低分子で容易に組織中に拡散するが,IgM抗体は胎盤を通過しない(図2).したがって臍帯血あるいは新生児血中に特異IgM抗体が検出されれば,新生児は子宮内で感染を受けたことの確定診断となる.
また成人の血清中に特異IgM抗体が証明されれば,それは感染を受けて間もないという感染の時期を類推できる.特にトキソプラズマ,風疹ウイルス,サイトメガロウイルス,ヘルペスウイルスなど母体が感染すると胎盤を経て病原体が胎児に移行し,障害児を産生する恐れのある感染症では母体の感染時期,胎児の感染の有無が問題とされる場合が多い.この場合,特異IgM抗体の検出をいかに早く,かつ特異的な方法で行うかが一つの鍵となる.そこでまず初めに,トキソプラズマ症,風疹について簡単にふれたのち,現在行われているIgM抗体の検出法について,著者のトキソプラズマ症における実験データをおり混ぜて紹介したい.
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