増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅹ.技術講座
2.同定キットの使用法
河村 好章
1
1岐阜大学医学部微生物学講座
pp.9,303-306
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902808
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はじめに
同定とは,未知の菌株(臨床分離株)が現在分類・命名されているどの菌種の範疇に入るかを決定する作業である.同定の基となる細菌分類学の領域では現在,遺伝学的手法(DNA-DNAハイブリダイゼーション法,16 S ribosomal RNA塩基配列の比較など)による分類が盛んに行われている1,2).これらの方法の一部はキット化され検査室でも利用可能3)であるが,一般にはその操作の繁雑さ,時間,コストの問題から細菌同定検査の日常業務として実施するのは困難である.細菌同定検査に要求されるのは簡便な操作と迅速で正確な同定であり,この要求を満たすものとして市販の簡易同定キットは有用である.
従来,細菌同定検査は目的とする菌群にもよるが,通常10種類程度の性状試験用培地を試験管などに作製し,臨床株をその1本1本に接種,1日から1週間培養後,発育の状況,色調の変化などによりその菌株の性状を決定し,分類・命名されているどの菌種の範疇に入るかを調べる一連の作業をこなす必要があった.同定キットの登場は,この一連の作業を大幅に簡略化することを意味した.まず繁雑な多くの種類の培地作製が必要なくなり,培養時間も短いものでは数時間程度,性状決定の判定基準は専用色調表や自動機器の利用により比較的一定になるといった具合である.
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