検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
パラコアグレーション—現象の背後に潜む反応と理論
松田 道生
1
1自治医科大学血液医学研究部門
pp.618-622
発行日 1980年8月1日
Published Date 1980/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202103
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
パラコアグレーションとは
パラコアグレーション(paracoagulation)という言葉は1953年Derechin1)により初めて用いられた.すなわち,フィブリンをプラスミンで分解する際,硫酸プロタミンをこれに加えると,非酵素学的なゲル化(nonenzymatic gelation)が観察されることから,これをパラコアグレーション現象(paracoagulation phenomenon)と呼んだのである.トロンビン(thrombin)のような酵素によらない,このようなフィブリン体のゲル化は硫酸プロタミンのほか,実に多くの無機塩類(塩化水銀,酢酸ウラニウムなど)や有機化合物(アニリン,ニンヒドリンなど)によっても引き起こすことができる.また,イオン強度を0.15M以下にしたり,温度を下げたり,pHを5.5近在に持ってゆくことによっても容易にゲル化を惹起できることが知られている2,3).
それでは,このゲル化とは一体どういう反応の現れなのだろうか.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.