おかしな検査データ
血清過酸化脂質測定時の問題点
篠原 力雄
1
,
迫田 岩根
2
1名古屋衛生技術短期大学生化学
2名古屋保健衛生大学医学部共利研
pp.598-599
発行日 1980年7月1日
Published Date 1980/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202099
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過酸化脂質は老化,肝疾患,網膜症及び血小板血栓などの原因の一物質であろうと推察されている.また粥状硬化症の血管壁には多量の過酸化脂質の存在が確認されており,また糖尿病時には血清中の過酸化脂質が著しく増加する報告などがある.このような観点から,最近,血清過酸化脂質の測定が保険診療の中で行えるようになった.
現在,生体内における過酸化脂質の生成機作についてはほとんど不明に近いが,実験動物では放射線照射とかある種の麻酔剤投与により肝臓内の過酸化脂質が増加するとの報告がある.また,invitroの実験においては,肝ミクロゾームに局在するNADPH-cytochrome c reductaseによる脂質過酸化反応がよく研究されている.このほかいろいろのin vitroにおける実験結果からでは,各種の要因によって生成されたfree radicalがある濃度に達するとO2がそのradicalと反応して活性酸素となり,不飽和脂肪酸(二重結合が二つ以上持つもの)と連鎖的に反応し,ハイドロペルオキサイドをはじめとして,各種のペルオキサイドが生成されるものと考えられている.生体内における活性酸素としてはSuperoxide anionやH2O2及び一重項酸素などがあり,なかでもSuperoxideanionは生体内の幾つかの酵素—例えばNADPH-cytohrome c reductaseやXanthine-oxidaseによっても生成されるので,生体内における過酸化脂質の生成にはSuperoxide anionの関与が大きいものと推察されている.
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