コーヒーブレイク
"患者を診る"とは
T. S.
pp.285
発行日 1979年4月1日
Published Date 1979/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201815
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ある日,某医から一人の患者の精密検査を依頼された.おおよその症状は,紹介医から聞いていたので,いきなり検尿を始め,諸検査のための採血,出血時間,凝固時間,毛細管抵抗,心電図,胸部X線などの検査をした.予定した検査を終了してから,後日主治医に,本日の検査結果を報告するから,もう帰ってよろしいと告げると,患者は不審そうな顔をして"先生,私はまだ先生に診てもらっていない"と言った.
"聴診器などで診るより,より多くの検査をしたのだからもう診る必要はない"と言って反撃しようと思ったが,それでは平素言っていることに矛盾するので,とっさに反省し,型どおりに,アナムネーゼを聞き,視診,聴診,打診,触診をし,血圧を測定した.驚いたことには,腹部が著しく膨満し,腹水が証明された.筆者の驚きの顔とは反対に,患者はようやく安堵の顔をして帰って行った.
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