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生体組織の水—その診断と治療への可能性
松原 実樹雄
1
1国立予研
pp.338
発行日 1979年4月1日
Published Date 1979/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201826
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水は生物にとって欠くことのできない重要な物質である.その主たる役割は生物が生命を維持し,発展させてゆくために必要な生体内の化学反応や物質移動の媒質となっていることであるが,単にそれだけでなくもっと積極的な役割をしていると考えられている.例えば,蛋白質の活性発現に重要な三次構造は側鎖間の疎水結合によるが,この疎水結合は水が三次元の網目構造を有することに起因している.このことは生体中の水の役割をその構造の観点から研究することの必要性を示している.一般に生体中の水は細胞壁や生体高分子との相互作用により熱運動が遅い.すなわち,純水よりも構造化している(このような水を結合水と呼ぶ).これに対して熱運動が束縛されていない水を自由水と呼ぶ.
近年になって生体系の水の機能をその構造と関連づけて研究しようとする気運が生まれてきた.その背景には物理化学の一つの研究領域である溶液論の進歩があったことは否めない.これまでに食品(これは生命活動を失った生体系である)中の水に関しては多少の研究があるが,医学・生物学に直結した生体組織の水の研究はまだほとんどない.
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