検査の苦労ばなし
未知の細菌との出合い
小寺 健一
1
1阪大微生物病研究会臨床検査部
pp.1004-1005
発行日 1978年12月1日
Published Date 1978/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201758
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1.シラス食中毒事件の発生
昭和25年といえば,現在臨床検査技師学校において勉学に励んでおられる皆さんの多くは,まだこの世に誕生しておられなかったはずである.6月には平和であった極東も北鮮と韓国が38度線において激戦が開始され,平和が破れた年のことである.
10月21日土曜日夕刊及び翌日の朝刊に大阪府の岸和田市,泉佐野市地区において大食中毒の発生が紙面に載っている.原因食としてシラス(カタクチイワシの稚魚を塩ゆでして半乾きにしたもの)が疑われ,シラスを作るときの食塩の代わりに亜硝酸ナトリウムを使用したのではないかとの情報を聞く.対岸の大火事と思っていると,思師藤野恒三郎教授(現,大阪大学名誉教授)が原因食のシラスを臨床細菌検査室に持って来られ,薬物の中毒も疑われるので,起病菌検出と並行して検査するようにと指示を受ける.
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