コーヒーブレイク
三人三様
Y. M.
pp.664
発行日 1978年8月1日
Published Date 1978/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201684
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過日,3人の外国人と京都へ行った.その新幹線の車中のことである.Aは最も若く元気があり,来日来の深夜に及ぶ諸行事にも平気で,京都までの3時間,だれに教わったのか自分の姓名を片仮名で書く練習を続けていた.手本を見て書くのだが,書き順は全くでたらめである.それらしい形を作ると自慢そうに見せて,どうかと聞く.横文字と違い,片仮名は一筆書きができないし,左から右ばかりでなく,右上から左下へあるいは下から上へはねたり,なかなか複雑である.そのうえ平仮名,漢字のあることを説明すると"とてもだめだ"という顔をする.それでもホテルのチェックインの時の宿泊カードに,考え考え片仮名でサインし,たいへん満足気であった.
Bは最年長,半分の平べったい老眼鏡を鼻の上に乗せている.彼も今度の来日で,自分の姓を片仮名で書くことを覚えたが,余り自慢しない.しかし漢詩を染め抜いたタイシルクのネクタイをホテルで買ったと言って,チョッキの間からのぞかせていた.静かに新聞を読んだり,眠ったりしていた.
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