技術講座 生理
小児脳波のとり方
難波 昭善
1
1岡山大学中央検査部
pp.379-392
発行日 1978年5月1日
Published Date 1978/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201617
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
近年臨床脳波学は著しく進歩し,脳波は臨床医学の各分野で不可欠な臨床検査法となっている.大脳の働きを,頭皮上から直接的に捕らえ,時々刻々に生きた脳の機能を客観的にしかも鋭敏に把握しうる優れた検査法である.被検者に苦痛を与えることもなく,副作用も全くないので,幼弱な新生児,乳児及び重篤な患者に対しても安全かつ容易に行うことができることも大きな利点である.一方,小児期には,てんかんをはじめとする中枢神経疾患が多く,しかも小児では異常の検出率及び臨床像—脳波像相関が高いので,臨床脳波検査の対象となる場合が多い.
そのうえ最近は異常波の検出のみにとどまらず,脳の機能的発達の状態を評価することを目的とする発達脳波学も重視されており,小児脳波検査の意義はますます高まってきている.しかし,小児脳波検査法には,成人の場合とは異なり,幾つかの特殊性があり,特殊の配慮が必要である.殊に乳幼児の場合,検査に対する協力が得られないという難点があり,その記録は決して容易ではない.最も難渋するのは,聞き分けのない,1〜3歳,あるいは,知能障害を伴う場合であり,特に覚醒状態の記録はなかなか困難である.小児では記録が難しいこと,検査時間が長くかかることが,多くの病院の脳波検査室において小児脳波が敬遠される大きな原因であろうと思われる.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.