コーヒーブレイク
法(のり)の月(つき)
金子 仁
pp.278
発行日 1978年4月1日
Published Date 1978/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201594
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私は昭和33年,国立東京第一病院に赴任してから本格的に俳句の勉強を始めた.私の俳名を法月(ほうげつ)と言うがこれは学生時代につけたのである.当時昭和20年の終戦のころで,私たちは山形県鶴岡市に大学疎開をしていた.自己流で俳句を作っていたが,どうせ作るなら号をつけて発表しようと考えていたとき,友人二,三人と羽黒山に登った.名だたる東北の名山で,山頂の神社までは何百段と石段がある.周囲は昼なお暗いうっそうたる千年杉の大木である,山伏の吹くホラ貝が時々聞こえる.石段は苔むして,徳利や猪口の彫刻がある.しばらく登ると右手の杉の木の下に石碑があり,句が彫り込んである.
なんとかで 千年の杉や 法の月 上五は忘れたが確かにその下に千年の杉や法の月と書いてある.作者の名もあったがそれほど有名な人でない.以来私は金子法月と号して句会に出た.
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