検査の昔ばなし
東大中検発足時の思い出
樫田 良精
1,2
1関東中央病院
2前:東大中検部
pp.780-781
発行日 1976年10月1日
Published Date 1976/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201187
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戦前の大学病院の検査
検尿コップ十数個,検便のシャーレか小型のマッチ箱数個,検痰用シャーレ,血算用メランジュールなどが18m2ほどの薄暗い小さな検査室の一隅に並べられていた.内科外来からの検査依頼の伝票の束を見ながら,今日の検査は何時ごろに終わるかと考え込んだ.これは昭和も1けたに近い,大学病院内科のある日の検査の思い出である.このころ,臨床検査を担当する技術者といえば,梅毒血清反応をルーチンにやる人が大学病院に1人いただけで,すべての検査は医師が自らやらねばならなかった.
入院患者の検査は原則としてその受持医が行うことになっていたが,しばしば若い医師が先輩の代行をさせられた.外来患者の検体検査の大部分は医学部卒業後半年ぐらいたったばかりの新人が治療室勤務の一環として当番制でやらされた.治療室というのは外来患者の注射,採血などを診察した医師の指示どおり行うところであった.入院患者を一人前受け持ち,教室の諸行事に追い回されながらやるのであるから,依頼された一般検査に取り組むのはどうしても夕方近くになった.従って検体の多い日には後始末をして帰るのが夜10時過ぎになった.
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