ひとこと
医療における協調
屋形 稔
1
,
稲生 富三
2
,
芹田 馨
3
,
扇谷 茂樹
4
1新潟大中検部
2社会保険中京病院検査部
3北海道立衛生学院
4近畿大病院中検
pp.308-309
発行日 1976年4月1日
Published Date 1976/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201043
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この課題ですぐに浮かぶイメージは次のようである.医療は近代化してゆくほど医師単独で行うことは不可能になり,多くの職種の人の協調を必要とする.看護婦は主に治療面で,検査技師は診断面でより深くタッチする.従ってこの協調が欠ける時結局とばっちりをうけるのは患者だから,医療においてこの点が強調されるのである.特に検査技師は職人肌の人が多く対人関係にとかく意志の疎通を欠き,協調を乱す元凶になることも通説のようで,この点はもちろん心せねばならない.
しかしよく考えるとこれは現在の医療を十分捕らえていない気がする.協調を求めるのはたいてい医師や看護婦から検査技師に対するもので,その逆のケースはあまりない.これは片手落ちで真に医療上求められるべきは逆の場合である.なぜなら,検査室では診断における検査工程で精度管理が十分行き届いているが,反面臨床科における精度管理はほとんどなされていないのである.臨床科は方法の原理,精度のよしあし,患者や検体の準備(検査室との事前協議の必要の有無)などについて最小の知識も持つべきで,これがないと診断や治療上重大なミスを招く恐れがある,もっともこうした責任の一半は,声を大にして協調を呼びかけない検査室側にもあるが,現在の病院や教育の仕組みからすると,医療構造に対する臨床側の認識不足のほうが責任は大である.
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