基礎から応用へ
統計学的思考・4
土肥 一郎
1
1中央鉄道病院内科
pp.29-30
発行日 1975年9月1日
Published Date 1975/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200865
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1.2系列の標本
前稿で説明したbinomial test及びχ2onesample testは,データが1系列で,その内部の区分に関する統計学的推定を行うものであった.これと異なり,2系列のデータについて論じなくてはならない場合も実際には多い.その最もありふれたものは第1回目に説明したχ2検定法である.この場合は例えば,K投与群とP投与群という別の2系列について,薬の有効率を比較するという操作を行ったわけである.この2系列は互いに独立な標本であった.すなわち,Kを投与するかあるいはPを投与するかということはランダムに割り付けたのである.
ところが同じく2系列の標本について行うテストでも,独立でなく関連のある標本について処理を行うという場合もある.例えば10人の被検者について薬Aと薬Bとをそれぞれ1週間ずつ投与した場合に(計2週間)投与前に比べて痛みの程度が著しく軽快した,著しいというほどでないがはっきりと軽快した,やや軽快した,不変であった,という4種類の定性的な結果が得られたとする.これを効果として,(⧻),(⧺),(+),(-)の4階級に分けるとすると,Aを使った結果は(⧻)で,Bを使った結果は(+)であるというようなデータが10人について得られることになる.
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