ひとこと
測定の技術と評価の論理
土肥 一郎
1
1中央鉄道病院神経内科
pp.10-11
発行日 1974年6月1日
Published Date 1974/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200470
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形,大きさ,含有量,出現回数などを測定する場合に望まれる結果の正確さということの内容は,系統的なずれがないことと,くり返し測定において変動が小さいこととを含んでいるが,前者は,たとえば糖を測っているつもりでいながら,試料の中に同時に含まれる他の成分もこみにして測ってしまうようなまちがいの除去であって,実質科学的な検討で達成されるものであり,後者は求められた値が,その前後にどの程度の幅をもつかというような含みであって,統計学的処理で評価されるものである.
技術者の心情として熟練した腕にとっては,また,微量測定が可能なような進んだ技術に対しては,得られた値は絶対に近く正確であると考えがちなものであるが,これは前者の領域に通用する考えを後者にまで拡大してしまったことになる.このようなまちがいは,変動が比較的少なく,測定条件をそろえやすいような状況下においておかされがちなもので,たとえば物理学的測定などではall or noneという思考習慣にも災いされて,少しかたよった結果が出ると直観的に捨てられたりすることがある.
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