技術講座 病理
ヘマトキシリン・エオジン染色
鬼頭 花枝
1
1愛知県がんセンター研究所病理
pp.66-67
発行日 1973年7月1日
Published Date 1973/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200202
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光学顕微鏡を使って組織や細胞の構造を観察する場合,未染色切片では光の屈折度の差のみでこれら構成分を十分識別しがたい.種々な色素による染色や鍍銀染色を行なって,初めて顕微鏡的構造を知ることができる.それゆえそれぞれの検査目的に応じた染色法を施して,組織切片の病理組織診断が最終的に確定される.病理組織検査に提出されたすべての標本は,まず組織の細胞核と原形質および膠原線維,筋線維などを染め分けるヘマトキシリン・エオジン染色を行なって観察される.これは普通染色あるいは一般染色とも呼ばれ,基本的な染色法である.この染色法の原理がその他の種々な特殊染色にも応用されるので,今回は染色操作の要点と注意を述べることにする.
染色するにあたって,各組織の染色性を知るため染色程度を吟味する.すなわちヘマトキシリンを多くとる細胞核の多いもの(リンパ節,扁桃腺,膵臓,胸腺,腫瘍),ヘマトキシリンとエオジン等量のもの(小脳,食道,胃腸,脾臓),エオジンを多くとるもの(大脳,甲状腺,肺,心,肝,腎,乳腺,前立腺,子宮,骨)などがある.これらの特徴に留意して,染色は時間よりも染めぐあいをみて進める.このように組織切片は組織の種類,染色性により,あるいは大きな手術材料と小さな試験的材料により,別々の染色かごに入れて操作すると分別過程がやりやすくなる.
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