技術解説
ヘマトキシリン・エオジン重染色法
畠山 茂
1
1東京医科歯科大学病理学教室
pp.27-29
発行日 1963年1月15日
Published Date 1963/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906060
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I.ヘマトキシリン(Hematoxylin)液
ヘマトキシリンは,すでに古く1860年代に始めて使用された自然の色素で,現在組織切片染色に利用する色素中最も一般的で有能な色素の一つである。ヘマトキシリンそのものは単独で使用しても,組織に対してはほとんど好染色性を示すことがなく,他の物質たとえばアルミニウム,鉄,クロム,銅,タングステン塩等の媒染剤と結合して始めて強力な核染色および核色質すなわちクロマチン染色作用を有するようになる。しかし実際はヘマトキシリン色素中の染色有効成分は,色素を酸化することによって得られ,これはヘマティン(Hematein)と呼ばれる。ヘマトキシリンの酸化は溶液または粉末の状態で数週間を要して空気と接触する間に行なわれるが,特に熱を加えると促進される。しかし過酸化物,ヨウ化物,過マンガン酸カリウム,過クロール化合物,酸化水銀や鉄塩等のような酸化剤を使用すると色素の酸化は直ちに得られる。従って注意しなければならないことは,古いヘマトキシリン色素を使用する場合すでにヘマティンが形成されていて,上記酸化過程を通常のごとく必要としないことがあり,かえって酸化剤を使用して染色性がそこなわれた経験も知られている。ヘマティンも単独では染色作用を有せず,前記媒染剤を結合させることによって始めて染色性を発揮するようになる。
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