病人と病気と病院
病院へのオリエンテーション
石原 信吾
1
1虎の門病院事務部
pp.12-15
発行日 1973年5月1日
Published Date 1973/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200134
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病気になったら病院に行く.これは,金を預けるなら銀行に行く,物を買うならデパートに行くというのと同じで一般にはあたりまえのことと考えられていると思う.そしてそれはそのとおりで,まちがいはない.しかし"それでは,その病院とはいったいどういうものであるか"ということを,いざ開き直って聞かれてみると,なかなかすぐには答えられなくて困ってしまう.今あげた銀行やデパートとはその点では非常に違う.もちろん銀行やデパートでも,その本質や本来のあり方というものを論ずることはそれほど容易ではない.しかしそのあり方や姿には,銀行どうしデパートどうしでそれほど大きな違いはないので,議論の的は絞りやすい.ところが病院の場合は,なかなかそうはいかないのである.
同じ病院といっても,その姿にも働きの内容にも内部構造にもその他いろいろな点において,病院どうしの間に非常に大きな違いが存在する.したがって"病気になったら病院に行く"くらいの漠然とした考えでいる間はまだよいが,いざ正面からその本質や本来のあり方を考えてみようということになると,案外問題がむずかしいことに気がつくのである.その結果,答えも人によってまちまちになる.病院の職員どうしの間でも,病院というものについてのイメージに大きな違いが存在することは珍しくない.そこに銀行やデパートとは違った病院の特殊性があるといえる.そういうことを念頭において,以下,私の説明をお読みいただきたいと思う.
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