医学の進歩をになった人々
北里柴三郎・1
中溝 保三
1
1東京都立荏原病院
pp.49-51
発行日 1973年4月1日
Published Date 1973/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200119
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北里を継ぐもの
昭和27-28年ごろのことであったが,九州での学会の帰途に阿蘇山見物に行くため国鉄のローカル線に乗ったことがあった.ところが,あるうらぶれた小駅から乗り込んできた,たったひとりの乗客が,慶応医学部の同級生のN博士であったのには驚いたものである.彼の故郷が,大分県であることを知っていたので,いったいどういうわけでこんな寒村の駅から乗車したかをたずねたところ,この地は,北里柴三郎の生地で,学会出席のついでにお墓参りに来たとのことであった.
N博士は,当時北里研究所における少壮の細菌学者で,常日ごろ北里敬慕の念の強いことを知っていた筆者は,さこそとうなずくと同時に,ここが北里生誕の地かと,車窓からの田園風景に思わず見入ったことが,なつかしく今思い出されるのである.
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