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依頼理由別の心エコーと所見別の対応がわかる初学者向け教科書
執筆陣全員が北海道民の心エコーの教科書が誕生しました.さて,「北海道民だけで執筆した教科書」にどんな意味があるのでしょうか? 執筆陣の中心となるわが友山田聡先生は信州出身ですが,監修の三神先生は「かつて日本の各地から移住した人々が築いてきたコラボレーションの伝統」「北の豊穣な大地」とその意義を説明されています.私自身は,本書は北海道民の「気概」を示すものと理解して,それではその内容は全国区で通用するものか否かを拝読吟味させていただきました.
心エコー初学者対象の292ページの教科書です.最初に総論として心エコーの基本がコンパクトにまとめられています.初学者対象でありながら,経食道心エコー法まで解説されており,また「心機能と血行動態評価の基本的な考え方」は短いながらも読み応えのある力作です.次に各論「心エコーの活かしかた」が配置されていますが,この部分が本書の特徴となります.従来の教科書は,疾患別に組まれているものがほとんどですが,日常臨床で患者さんが疾患別に心エコー検査室に来られることはありません(経過観察などを除く).初診患者さんが心エコー室に来られる際の情報は「主治医からの依頼理由と臨床所見」です.私自身も「依頼理由別の心エコー」を単行本で著したり,雑誌の企画で取り上げたりしてきましたが,本書は最新の「依頼理由別の心エコー」教科書であります.さらに,心エコー室で依頼内容とは無関係の重要所見が偶然得られることもあります.これ,すなわち「得られた心エコー所見別の対応」にも十分なページが割かれています.前者が,主治医から検査者への投げ掛けで,後者が検査者から主治医への投げ掛けとなり,この二つが本書のタイトル「エコーでコラボ」「主治医と検査者の相互理解」の内容そのものであります.それでは,「心エコーの奥義」とは何でしょうか? 「人生とは死ぬことと見つけたり」のような至言・箴言がどこかに隠されているのかと思い読み進みましたが,各論14から32に盛り込まれた症例提示を通じた「主治医と検査者のやりとり(コラボ)」の数々が本書にちりばめられた奥義であることを納得しました.例えば「残留多重反射」「悪性リンパ腫」「左脚ブロック」のような内容が漏れて(省かれて)はいますが,それは単行本としての紙数制限のために致し方ないことと思います.「主治医と検査者のやりとり」という目で各論を読み進むと,特に初学者にとって心エコーの醍醐味・楽しさが味わえる素晴らしい読み物であることがわかります.各項における緊張感はやはり「道民の気概」を示していると言わざるを得ず,道民以外の日本人にも推薦したい心エコー法の教科書であります.
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