Laboratory Practice 〈微生物〉
メタゲノム解析による次世代型網羅的病原体検出の取り組み
黒田 誠
1
1国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター
pp.372-377
発行日 2014年4月1日
Published Date 2014/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104245
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はじめに─ゲノム解析とは?1)
まず,この大きな命題と,その恩恵を知ることから始めたい.近年,研究対象の生物を理解する最も有効な手段としてゲノム解読が挙げられ,その情報基盤のもと,病原性や薬剤耐性について包括的に,かつ俯瞰的に議論されつつある.また,腸内細菌フローラを代表とする“メタゲノム解析”が盛んに研究されている.メタゲノム解析は“あるがまま包括的にゲノム解読・解析する”という点が特徴的である.
上部・下部消化管には,それぞれ特有の細菌フローラが存在し,個体の食餌(食事)で摂取した栄養物を多様な細菌種が代謝して健全な“便”へ導くと考えられている.例えば,食事・年齢・人種など,異なる要因がどのように腸内フローラに影響を与えるのかの研究が行われている.炎症性腸疾患といった,症状とフローラに接点があるかもしれない病態では,症状の程度と相関する病原体が発見されれば,予防・治療法の決定において恩恵が得られることだろう.
本稿では,一般的なPCR(polymerase chain reaction),LAMP(loop-mediated isothermal amplification)などを用いた病原体個別の検査同定法ではなく,“患者臨床検体(血清,髄液など)のDNA/RNAをメタゲノム解析して,そこに内在する生物種を包括的に検出・分類する”という新しい着眼点を紹介したい.確立した検査法ではなく,現在,研究開発がなされながら不明症例の解明も行われている.検出した1つの病原体にとらわれず,俯瞰的な情報をもとに総合的な判断が下せる,そのような病原体検査法が主流になる時代がくるかもしれない.
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