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はじめに
呼吸器感染症は今日において最も重要で,かつ頻度の高い疾患の1つである.肺炎患者への対応では,迅速かつ正確な起因病原体の決定が重要である.しかし,実際の臨床現場では,診断に難渋する症例,起因病原体不明症例が多数みられる.特に一般細菌培養検査で陽性とならない,レジオネラ,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジアなどのいわゆる非定型肺炎の診断は今日においても難しい.
市中において発症する呼吸器感染症の原因微生物の1つである肺炎マイコプラズマは細胞壁をもたない,長さ約1~2μmの細菌である.従来,肺炎マイコプラズマ感染症は数年おきに流行を繰り返し,「オリンピック肺炎」などの呼称をされることもあったが,近年ではその流行パターンは崩れ,2000年以降ではほぼ2年おきに小流行を繰り返していたが,2011年半ばから突如,全国的に今までにない大きな流行を認め現在に至っている.また,わが国では2000年ごろから小児科領域を中心にマクロライド(macrolides,MLs)耐性肺炎マイコプラズマ感染症の報告があって以降,その分離率は上昇の一方をたどっている1).流行の拡大に伴って,MLs耐性肺炎マイコプラズマによる成人肺炎例も増加している.このようなMLs耐性株による報告例は当初は日本のみであったが,最近では世界的にMLs耐性株の存在が報告されている.いずれも小児や若年成人での報告が主である.
マイコプラズマの診断法は大きく分けると,①PPLO(pleuro-pneumonia-like organism)培地を用いたマイコプラズマの分離を行う培養法,②寒冷凝集素法(cold hemagglutinin,CHA),酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay,ELISA),微粒子凝集反応〔PA(particle agglutination)法,HDPA(high density composite particle agglutination)法〕,補体結合反応(complement fixation,CF)法などの免疫血清学的診断,③血清または血漿を用いたイムノカード®「マイコプラズマ抗体キット」(immuno card mycoplasma,IC)法,④DNAレベルで迅速に検索するPCR(polymerase chain reaction)法〔real-time PCR法,LAMP(loop-mediated isothermal amplification)法,従来型のPCR法〕,の4つがある.現在臨床で応用されているのは,②の血清免疫診断であるPA法またはCF法と,③のマイコプラズマIgM(immunoglobulin M)を検出する迅速性に優れたIC法が大半である.また,④のLAMP法が保険収載されている.
本稿では,肺炎マイコプラズマの検査法の進展について,培養法,血清診断法,抗原検出法,遺伝子診断法などを中心に概説する2).
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