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推奨される抗D人免疫グロブリンの投与
石本 人士
1
1東海大学医学部専門診療学系産婦人科
pp.504-509
発行日 2013年6月1日
Published Date 2013/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103955
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はじめに
母体と胎児の血液型が異なり,かつ母体に抗赤血球抗体(不規則抗体)が存在する場合,この抗体が胎児血中に移行して胎児血と抗原抗体反応を起こし胎児や新生児に溶血がみられることがあるが,このような可能性のある妊娠を血液型不適合妊娠という.臨床的に問題になるのはRh式血液型不適合妊娠が大半を占める.Rh式血液型を形成する6因子の1つであるD因子〔factor D,D,Rh(D),Rho〕は他の因子に比べ抗体産生能が特に強く,胎児・新生児溶血性疾患(hemolytic disease of the fetus and newborn,HDFN)の原因として最多である.D陰性の多い人種(例えば白人種で15%,アフリカ系アメリカ人で8%)に比べ,日本人ではD陰性が1%未満しか存在しないが1),Rh(D)不適合妊娠によりHDFNが発症した場合,児は極めて予後不良となることがあり,決して軽視できない病態である.
しかし,Rh(D)不適合妊娠は血液型不適合妊娠で唯一,感作予防が可能である.D陰性の妊婦がD陽性の児を妊娠・分娩した場合,D抗原に感作する可能性が高まるが,抗D人免疫グロブリン投与によりD感作の可能性を有意に減らすことができる.
本稿では,推奨される抗D人免疫グロブリンの投与について,背景と最近の知見を述べる.なお,D因子はD(Rho)とも表記されるが,本稿ではRh(D),あるいは単にDと表記する.
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