臨床医からの質問に答える
“心膜癒着サイン”とはなんですか?
増田 喜一
1
1吉田小野原東診療所検査室
pp.534-536
発行日 2012年6月1日
Published Date 2012/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103566
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はじめに
傍胸骨アプローチで心エコー像が得難い場合には,心窩部からのアプローチが試みられ,肝臓をエコーウィンドウにして画像を描出する.また,このアプローチ法は下大静脈や右房および右室自由壁の観察に最も適している.
十数年前になるだろうか.冠動脈バイパス術後の患者を検査することになった.心窩部四腔断面を描出して心臓を観察すると,通常は肝臓横隔膜下(心膜下)を三尖弁輪および右室自由壁が収縮期に心尖部方向へ滑るような動きを呈するのがみられず,肝臓が心臓方向に引っ張られているような動きが観察された.この奇妙な動きはその後の検討により,開心術が原因で心膜が癒着して起こる術後収縮性心膜炎に特徴的な現象であることがわかってきた1,2).またそればかりではなく,他の原因で起こる収縮性心膜炎においても右室前壁側に心膜癒着が存在すれば同様の現象が認められることから,今ではこの特徴的な動きを“心膜癒着サイン”と呼んでいる1,3).
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