技術講座 病理
胃癌HER2検査の意義と判定基準
石田 道拡
1
,
九嶋 亮治
1
1国立がん研究センター中央病院病理科
pp.994-1000
発行日 2011年10月1日
Published Date 2011/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103333
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新しい知見
HER2遺伝子(HER2/neu,c-erbB-2)とその遺伝子産物であるHER2蛋白は正常細胞の増殖分化などの調節に関与している.これまで多くの癌細胞でHER2遺伝子の増幅とHER2蛋白の過剰発現が報告されてきた.特に乳癌においてHER2遺伝子増幅/蛋白過剰発現は重要な予後因子であり,HER2蛋白を標的にした分子標的薬剤であるトラスツズマブ(ハーセプチン®)がHER2を過剰発現した乳癌の治療に幅広く用いられている.今回,国際共同第III相無作為化比較試験であるToGA試験の結果を踏まえ,2011年3月よりわが国でも「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌」に対してトラスツズマブの適応が可能になった.胃癌のHER2検査法は乳癌と基本的に同様であるが,未分化型癌よりも分化型癌で陽性率が高く,組織内多様性・不均一性が強いという特徴を知っておくことが重要であり,免疫染色では側方細胞膜(lateral membranous)の陽性像を観察しなければならない.in situ hybridization法においてもHER2発現の不均一性を考慮する必要がある.
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