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内視鏡的粘膜切除(endoscopic mucosal resection;EMR)は,粘膜内に限局する胃癌(m癌)の治療法として,従来の外科的治療に代わって全国で積極的に行われるようになってきた.胃癌研究会でもその取扱い規約が既に付記され,共通な切除標本の病理組織学的検索方法により症例が蓄積されているはずである.根治性を目指した内視鏡治療において最も大きな問題点は,完全切除の判定基準である.この根治可能な早期胃癌に対して中途半端な切除は許されない.せっかく早期のm癌が発見されてもEMR後の遺残再発で貴重な命を落とすリスクもあるからである.根治を得る条件として,①リンパ節転移が絶対ないこと,②術前の癌浸潤範囲の正確な把握,③EMRの手技の正確さ,④完全切除したと思われる切除標本のマクロ,ミクロでの判定基準の確立,などにおける問題点を整理し,一定の完全切除の判定基準をつくることが必要である.最近EMRの手技の確立とその安全性により20mmを超える大きい病変に対しても適応拡大される場合が少なくない.この際,分割切除されることが多いが,この分割切除された場合の完全切除の判定はより慎重に行わなければならない.これまでは胃癌EMRの完全切除の判定は個々に報告されてきたが,そろそろ全国レベルで統一する時期に来ている.
そこで本号では,『胃癌EMRの完全切除の判定基準を求めて』を主題として取り上げることになった.本号では検討対象を外科的手術可能例を中心に論ずることを前提としている.まず早期胃癌に対する根治を目的としたEMRの完全切除の判定基準を決めるとき,最も大きなものとして浸潤範囲,すなわち癌の水平方向と垂直方向への拡がりの判定が問題となる。臨床的には術前診断の正確さ,色素内視鏡,拡大内視鏡,超音波内視鏡の所見などを動員し,癌の拡がりを把握したうえで癌境界への点墨,クリッピングなどがなされ完全切除へ向けて努力されている.しかしなかには,EMR切除標本の病理学的検索で断端陽性例もみられ,マクロとミクロとのギャップを知らされる症例も存在する.また辛うじて断端に癌陰性であっても1~2腺管のみでは十分とは言えまい.非連続性病巣の存在も考えられるからである.病理学的にみた場合,癌病巣から何腺管まであれば安全なのか? burn effectは期待できるのだろうか? など疑問が多い.この点については病理の立場から論じてもらう予定である.次に垂直方向への拡がり,いわゆる深達度が問題となる.分化型m癌でUl(-)の場合は問題はないとしても,Ul(+)の場合や微小な未分化型m癌の場合は適応外なのだろうか? 粘膜筋板や粘膜下層への微量浸潤の場合に更なる外科的手術が必要となるのだろうか? などの問題が提起されてくる.もし高分化型腺癌でもごく微量なsm浸潤であればリンパ節転移がみられないという報告も多い.わが国の過去の莫大な切除材料から一定の指針が得られるのではないかと期待している.
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