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1 small dense LDL
LDL(low density lipoprotein)分画はいろいろな大きさのLDL粒子の集団から成り立っているが,最近では特にサイズの小さな,比重の重い(small,dense)LDLの動脈硬化への関与が注目されている.このLDL粒子はin vitroで酸化を受けやすいことが指摘されており,このことがLDLリセプターによる細胞内への取り込みの遅延を招き1),動脈硬化進展の原因となる.最も注目すべき点は,small dense LDLをもつ場合はパターンBと呼ばれ,正常のサイズのLDL粒子をもつ場合(パターンA)に比べて心筋梗塞の発生率が3倍となることである.既に日本人で心筋梗塞を起こした症例の7割以上がパターンBを呈することが報告されており2),筆者らは特に2型糖尿病に心筋梗塞を合併した場合にsmall dense LDLの保有率が76%にも達することも確認している.すなわち欧米人に比べて脂質異常症(高脂血症)の頻度が低く,また心筋梗塞を発症した症例における高コレステロール血症の合併の割合も低い日本人にとっては,血中LDLコレステロールレベルよりもLDLサイズがよりリスクの判定に重要な位置を占めるものと考えられる.
LDLサイズを推定する方法としては,Kraussらのpolyacrylamide gradient gelを用いた電気泳動法が最も信頼性が高いが,泳動時間が長く,操作法も煩雑である.日常の医療保険診療下では,均一な濃度のpolyacrylamide gelを用いた“リポ蛋白精密電気泳動”といった検査項目で推定することが可能である(図)3).一方,Hiranoらは,small dense LDLと正常サイズのLDL粒子の間にはコレステロール含量など微妙な組成の差が存在することから,LDLコレステロールの直接測定法と同様に,リポ蛋白粒子間のわずかな組成の差を利用して自動分析装置にてsmall dense LDLの分別定量が可能な測定キットを考案し,発表した4).この測定キットの原理は第一ステップとして,VLDL(very low density lipoprotein)と正常サイズのLDL分画を沈澱法で分離し,small dense LDLとHDL(high density lipoprotein)分画が含まれる上清を従来のLDLコレステロールの直接測定法を用いてsmall dense LDLコレステロールを求めるものである5).最近ではさらに本法が改良され,自動分析装置でワンステップで測定可能なキットが発売されている.本法によって求められたsmall dense LDLコレステロール値は,超遠心法によるものと極めて良好な相関がある.
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