増刊号 免疫反応と臨床検査2010
III 輸血
2 血液型の遺伝子検査と血清学的検査の違い
新谷 香
1
1東京大学大学院医学系研究科法医学教室
pp.852-856
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102907
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はじめに
1900年にランドスタイナー(Landsteiner K)は何人もの血液から血球と血清を分離し,いろいろな組み合わせで混ぜ合わせたところ,血球が凝集する組み合わせと,凝集しない組み合わせがあることを発見した.血清には自己の血球には存在しないABO血液型抗原に対する抗体(規則抗体)が存在するという,このランドスタイナーの法則に基づいたABO血液型検査のオモテ・ウラ試験は,1世紀以上が経った今でも必須の輸血検査である.
一方,1990年にABO遺伝子の塩基配列が決定され,DNA解析による遺伝子型判定が可能となった.遺伝子検査は塩基配列を解析するため,クリアカットな判定結果を得ることができ,凝集反応が弱く,判定の困難な亜型などの血液型判定に有用である.また,ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction,PCR)でDNAを増幅できる遺伝子検査は高感度で,微量な検体を扱う法医学領域では血清学的検査方法に変わる方法となっている.しかし,血液型判定の原理の違いから,遺伝子検査から判定された遺伝子型が稀に血清学的検査結果と矛盾することがある.
本稿では,各検査の術式については他書に譲り,このような矛盾が生じるABO血液型の亜型を取り上げながら,血液型の遺伝子検査と血清学的検査の違いについて解説する.
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