臨床医からの質問に答える
肺癌の検体を用いて遺伝子検査をしたいのですが,どの遺伝子パネル検査に提出すればよいですか? それぞれの違いはなんですか?
角南 久仁子
1
1国立がん研究センター中央病院臨床検査科
pp.769-772
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.030126110530070769
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
肺癌診療における遺伝子検査の重要性
癌についての研究が進み,癌は主に遺伝子の異常が原因で起こることが分かってきました.癌の発生に重要な役割を果たす遺伝子異常を“ドライバー遺伝子異常”と呼びますが,そのドライバー遺伝子異常によって作られる異常タンパク質(分子)に対する分子標的治療薬の開発が進められています.分子標的治療薬は従来の殺細胞性抗癌薬よりも治療効果が高い場合が多いため,癌の診療においては,ドライバー遺伝子異常の有無を適切に判断して治療を選択することが重要です.
非小細胞肺癌は,EGFRをはじめとする数多くのドライバー遺伝子異常が同定されており(図1)1),それぞれに対する分子標的治療薬が保険適用されています.日本肺癌学会による「肺癌診療ガイドライン(2024年版)」2)において,「治療方針を決めるための,分子診断の項目は何か?」というclinical question(CQ)に対して「進行・再発非小細胞肺癌の場合は,EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET,RET,KRAS,HER2の遺伝子検査およびPD-L1 IHCを行うよう強く推奨する.(推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:B)」と,ドライバー遺伝子異常を網羅的に検索することの重要性が示されています.また,これらの分子診断については「検査項目に優先順位をつけず,同時に行うよう強く推奨する.(推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:C)」ともされており,ドライバー遺伝子異常の検索には複数の遺伝子を一度に解析できるマルチプレックス検査が推奨されています.

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.