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Clostridium difficile感染症とタイピング法について
C. difficile感染症(C. difficile infections,CDI)は,医療関連感染の一つとしてよく知られているが,最近は,市中感染としても注目されている.さらに,ウシやブタにおけるC. difficile感染1)や,食品における汚染などにも大きな関心が寄せられている2).CDIは医療関連感染として重要であるため,感染源や感染経路の調査目的にさまざまなタイピング法が開発・応用されてきた.タイピング解析を,医療施設内での菌株間の比較だけでなく,施設や地域を超えて分離された菌株の比較検討に応用すると,特定の菌株が複数の医療施設において流行株や優勢株となっていたり,菌株間で病原性の差異が認められていたりすることが,明らかになってきた.
C. difficileのタイピング法としては,さまざまな方法が開発・評価されており,表現型別では血清型別3),遺伝子型別ではrestriction endonuclease analysis(REA),pulsed field gel electrophoresis(PFGE)解析,PCR ribotyping,multilocus sequence typing(MLST),multilocus va-riable-number tandem-repeat analysis(MLVA),amplified fragment length polymorphism(AFLP)解析,およびsurface layer protein A gene sequence typing(slpA sequence typing)などがある4).多くの研究室で採用されているタイピング法は,PCR ribotypingとPFGE解析で,Stubbsらにより確立されたPCR ribotyping5)による解析は英国を中心としたヨーロッパで,PFGEによる解析は主に米国やカナダで行われている.一方,C. difficileの産生する毒素には,toxin A,toxin B,およびbinary toxinがある.toxin A遺伝子とtoxin B遺伝子が位置しているpathogenicity locus(PaLoc)に認められる多様性はtoxinotypeとして分類される6).
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