増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学
II 微生物検査
総論
2 染色法の原理と特徴
3 抗酸染色
宮部 安規子
1
,
渡邊 正治
1
,
野村 文夫
1,2
1千葉大学医学部附属病院検査部
2千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学
pp.904-906
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102548
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はじめに
抗酸菌はグラム染色で染色すると一様には染まらず,数か所が顆粒状に染まったりガラス状にみえる.これは抗酸菌の細胞壁は脂質含有量が多いため,染色色素の通過が容易でないためである.染色するには媒染剤を加えたり染色液を加温する必要がある.しかし,いったん染められた菌は脱色作用のある酸やアルコールでも脱色されにくい.これを抗酸性(acid-fastness)という.
抗酸菌の染色には,一般的に蛍光染色法と石炭酸フクシン法がある.蛍光染色法は,蛍光色素であるオーラミンOやアクリジンオレンジなどで染色し,励起光を照射することにより発生する二次蛍光を蛍光顕微鏡で観察する.一方,石炭酸フクシン法は,媒染剤として用いられている石炭酸が脂質を溶解し,加温もしくは高濃度にすることで塩基性フクシン液が菌体と結合し染色される.
蛍光染色法が200倍で30視野鏡検し判定するのに対し,石炭酸フクシン法は1,000倍油浸で300視野鏡検しなければならない.そのため蛍光染色法のほうがより簡便で迅速に判定することができる.しかし抗酸菌以外にも蛍光を発するものがあり偽陽性が生じやすい.200倍拡大で1視野に1個以下の場合はチール・ネールゼン法で確認する必要がある.その際,蛍光染色標本をチール・ネールゼン染色できるので,陽性の場所を記載しておくと確認が容易である.
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