増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学
序
菅野 治重
1
1医療法人社団徳風会髙根病院
pp.877
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102542
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顕微鏡検査は,微生物,細胞,結晶など豊富な情報が得られる検査です.しかし現在の顕微鏡検査は,微生物,細胞診,血液像,尿沈査などの分野に分かれて検査が行われており,検査成績も各領域に限った内容が報告されています.しかし,検査技師が自分の専門領域に加えて他の領域の顕微鏡検査の観察法を習得することによって,顕微鏡検査から得られる情報が飛躍的に向上する可能性があります.
例えば微生物領域の顕微鏡検査では,通常はグラム染色による微生物の観察のみが行われており,検査結果として「グラム陰性桿菌(3+),グラム陽性球菌(+)」などと医師に報告されることが多いのですが,これでは感染症の診断には情報として不十分であり,医師も検査成績の意味が理解できません.この微生物情報に,「多核白血球(3+)」などの細胞情報を加えることによって,患者さんの感染症が急性炎症期にあることがわかり,さらに検出菌は感染症の原因菌である可能性が高くなります.
このように,疾患の診断と治療に役立つことを目的とする顕微鏡検査では,「病像」検査としての役割があり,判読には幅広い領域の知識が必要となります.各専門領域の顕微鏡検査については多くの参考書がありますが,専門領域を超えて顕微鏡検査を総合的に解説した本は極めて少なく,ここに本書の存在意義があると思います.
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